今月のトピックス

2019年1月から、院長がピックアップしたトピックスをご紹介しています。


2019年

4月の話題

抗TPO抗体陽性者への受胎前レボチロキシン投与

NEJM 2019;380:1316-1325

TPO抗体陽性の妊婦では、甲状腺機能が正常であっても流産や早産のリスクになることが報告されています。レボチロキシンの投与は、それらの発生率を低下されることが期待されています。今回のTABLET試験では、イギリスの49病院、19585人の女性の中から、それぞれ476人のレボチロキシン群とプラセボ群を対象に、受胎前から妊娠末期までのレボチロキシンの投与の有効性を検討しました。主要評価項目は妊娠34週後の生児出生でした。

妊娠率は、レボチロキシン群56.6%m、プラセボ群58.3%で、妊娠34週以降の生児出生率は、レボチロキシン群37.4%、プラセボ群37.9%で、差は認められませんでした。あた、流産や早産の妊娠転帰にも有意差は認められませんでした。

今回の結果からは、甲状腺機能が正常のTPO抗体陽性の女性に対してレボチロキシンの投与は、必ずしも妊娠率の上昇や流産や早産のリスク低下には繋がらないことが示されました。

 

 

食事性コレステロールまたは卵の摂取と心血管疾患・死亡率の関連

JAMA. 2019;321:1081-1095

コレステロールは、飽和脂肪酸や動物性タンパクなどと混在して食物に含まれるため、食事からのコレステロールの摂取は、心血管疾患やその死亡と直接関連するかは必ずしも一定しか見解は得られていません。食事からのコレステロールのソースは、卵や赤身肉、鶏肉、魚介類、乳製品が主ですが、とくに卵の黄身は、食事性コレステロールが多く、50gの大サイズの卵は186mgのコレステロールを含むとされています。

ARIC、CARDIA、FHS、FOS、JHS、ESAの6つの前向きコホート研究から29615人が解析されました。追跡期間の中央値は17.5年で、CVDイベントが5400件、全死亡が6132件発生しました。食事性コレステロールまたは卵の摂取の増加に伴い、CVDイベントと全死亡は単調な増加が認められ、300mgの増加毎に、CVDイベントのハザード比が1.17、全死亡が1.18増加しました。卵の摂取も個数の増加に伴い単調にリスク増加が認められ、1日あたり1/2個増加する毎に、CVDイベントと全死亡のハザード比はぞれぞれ1.06、1.08増加しました。ただし、卵の摂取は、食事性コレステロールの消費量で調整するとそのリスクは消失しました。

本研究では、食事性コレステロールまたは卵の摂取は用量依存性にCVDイベントと全死亡を増加させることが明らかとなりました。

 

 


3月の話題

フレイル・サルコペニアの進展因子は男女差がある

Ther Adv Endocrinol Metab. 2019 Mar 5;10: 2042018819833304. doi: 10.1177/ 2042018819833304. eCollection 2019.

日本は超高齢社会を迎え、フレイルやサルコペニアの問題がクローズアップされています。とくに糖尿病では一般高齢者よりも早期からフレイルやサルコペニアになりやすいと報告されています。しかし、日本糖尿病患者さんにおいて、その進展因子は明らかではありませんでした。フレイルやサルコペニアの進展リスクには、共通の因子と男女別の因子がありました。

共通のリスクとしては末梢神経障害が挙げられました。男性に特異的な因子としては、冠動脈疾患の既往、年齢、無職、独居が挙げられました。一方女性では、家族との同居、食事制限、不規則な生活が挙げられました。さらに、フレイルやサルコペニアを予防するには、男性では、適切な食事が、女性では骨格筋量の多さ、独り暮らし、LDLコレステロール高値が挙げられました。

もともと男女では体格が異なり、日本では社会的な役割も異なることがあり、男女別にリスクを評価し、介入する必要性があるようです。

中年期の食事内容は認知症発症のリスクにならない

JAMA. 2019;321:957-968.

JAMA Neurology 2017では、認知症発症のリスクとして、中年期の喫煙や糖尿病、高血圧がリスクになることが報告されています。また、Lancet 2017では、中年期の聴力低下が大きなリスクであることも発表されています。認知症を予防するには、食事や運動が重要であることが報告されています。とくにMIND食は認知症発症を予防できる (Dementia 2015) ことが報告されています。

今回の発表では、中年期の食事内容は認知症発症とは明らかな関係がないというショッキングなものでした。認知症のない男女8225名を中央値で24.8年もフォローした長期前向きコホート研究で、食事の質の評価は11の要素からなる食事の質スコアAHEIを用いています。公務員を対象としており信頼性は高いとされています。多変量解析の結果では、AHEIスコアと認知症発症リスクとの間には有意差が認められませんでした。ただし、著者も、食事が重要ではないといっているわけではないと述べています。

昔から医食同源といいます。健康的な食事をして悪かったということは一度もないのですから、バランス良く食事をすることに越したことはありません。


2月の話題

妊娠合併症は長期の心血管疾患罹患率と死亡のリスクである

Circulation 2019;139:1069-1079

妊娠中の子癇や高血圧、糖代謝異常は、産後の母親の心血管疾患リスク上昇につながることが知られている。本研究では、84の研究から28,993,438人をも対象に、妊娠合併症と長期の心血管疾患リスクとの関について系統レビュー・メタ解析を行った。観察期間の中央値は産後7.5年であった。その結果、心血管疾患のリスクのオッズ比は、妊娠高血圧症候群1.7、子癇前症OR:2.7、常位胎盤早期剥離1.8、早産1.6、妊娠糖尿病1.7、死産1.5であった。低出生体重児や在胎期間相当の体格よりかなり小さく生まれた新生児の出産でも心血管疾患リスクは上昇したが、流産では増加しなかった。

このことから、妊娠中に何かしらの合併症を有した母体においては、産後の長期のフォローアップが必要であり、産後教育が重要になると考えられます。

 

1型糖尿病と学力~差はなし~

JAMA Network 2019;321:484-492

1型糖尿病のお子さんを持つ親は、お子さんの学力が気になるかもしれません。デンマークから、1型糖尿病の学童と同世代の糖尿病でない学童との間で、標準的学力(読解と算数)は変わらないと報告がありました。

631,620人の公立学校に通う平均年齢10.3歳の小学生を対象に、算数は524,764人、読解1,037,006人がテストを受けました。1型糖尿病の小学生は2,031人含まれていました。1型糖尿病を持つ小学生のスコアの平均点は56,56だったのに対し、糖尿病を持たない小学生のスコアの平均点は56.11点で、全く差がありませんでした。

糖尿病を抱えての生活は大変ですが、国も社会も医療費を含め適切にサポートできれば、1型糖尿病を持つお子さんは同世代のお子さんと変わらず成長できることを示してくれました。

 


1月の話題

オメガ3系脂肪酸は心血管イベントと癌の発症を抑制しない

N Engl J Med 2019;380:23-32

オメガ3系脂肪酸(オメガ3)は多価不飽和脂肪酸の一種で、脂肪の多い魚や貝類・甲殻類などの食品に含まれています。EPAやDHAなどサプリメントとしても人気な栄養素です。最近では、亜麻仁油も人気です。

心血管イベントの抑制や炎症抑制、脂質代謝改善などの効果が期待されています。

しかし、1月3日に発表されたアメリカでの研究では、必ずしもよい結果が得られていません。25871人を対象とした無作為化プラセボ対照試験で、ビタミンD3を2000単位/日摂取する群とオメガ3を1g/日摂取する群を二要因デザインを用いて解析しました。観察期間の中央値は5.3年で、心血管イベントは心筋梗塞の発症、脳梗塞の発症、それらによる死亡とし、癌は、いずれの進行癌としています。

もともと心血管症が少ない日本人にも当てはまるかはわかりませんが、健康維持を目指すことは悪いことではないと考えられます。

ビタミンD3は癌と心血管イベントの発症を抑制しない

N Engl J Med 2019;380:33-44

ビタミンD3の低下は骨粗鬆症や認知症、心血管イベント、悪性腫瘍発症と相関するとされ、積極的な摂取が望まれています。

しかし、1月3日に発表されたアメリカでの研究では、必ずしもよい結果が得られていません。25871人を対象とした無作為化プラセボ対照試験で、ビタミンD3を2000単位/日摂取する群とオメガ3を1g/日摂取する群を二要因デザインを用いて解析しました。観察期間の中央値は5.3年で、心血管イベントは心筋梗塞の発症、脳梗塞の発症、それらによる死亡とし、癌は、いずれの進行癌としています。

一方で、皮膚癌を恐れ極端に日に当たることを避けるのも、骨粗鬆症などのリスクとなり危険です。ビタミンDは日光により活性化されます。普通に日常生活を送ることが望まれます。