糖尿病
DIABETES
糖尿病とは
誰でも食事をすると一時的に血糖値が高くなりますが、「インスリン」というホルモンがすい臓から分泌されることで、時間とともに正常値に戻ります。ところが、このインスリンの分泌量が少なくなったり、インスリンが分泌されてもうまく働かなくなったりすると、血糖値が高い状態が続いてしまいます。これが、糖尿病です。糖尿病は、その成りたちによっていくつかの種類に分類されますが、大きく分けると「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして妊娠中に耐糖能異常をきたす「妊娠糖尿病」があり、一つの疾患ではありません。
血糖値が高くても、初期のころは自覚症状がほとんどないため、糖尿病に気づかなかったり、気づいていてもつい治療をおろそかにしてしまう人も少なくありません。しかし、そのまま放置して病気が進行すると、多くの場合合併症が起こります。進行すると失明に至ることもある糖尿病網膜症、透析治療などが必要になる糖尿病腎症、壊疽(えそ)を起こして足を切断することもある糖尿病神経障害の「三大合併症」を起こすこともあります。また脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる病気を引き起こす可能性が高まります。そのため、早いうちから、血糖値を適正範囲内に管理することが大切です。
専門医による高度な治療
京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科での長年の経験を活かし、最前線の治療を実践します。
糖尿病治療薬は多く開発され、また、糖尿病治療に関するエビデンスも数多く構築されました。その結果、診療ガイドラインも様変わりました。近年、専門医による治療が重要になっている理由はここにあります。当院では、糖尿病治療のABCの管理とエビデンスに基づき、一人ひとりに適切な治療を提案します。
<糖尿病治療の基本(ABC)>
A:HbA1c
B:Blood Pressure (血圧)
C:Cholesterol(コレステロール)
D:Diet(食事療法)&Diabetes Education(教育)
E:Exercise(運動)&Eye(目)
F:Foot (フットケア)
G:Glucose monitoring(血糖測定)
H:Heart(心臓)
I:Crinical Inertia(まんねり化の打破)
J:Diabetes Journey(人生プラン)
K:Kidney(腎臓)
さまざまな糖尿病
1型糖尿病
1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど出なくなる(インスリン分泌低下)ことにより血糖値が高くなります。生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須(インスリン依存状態)となる糖尿病です。
2型糖尿病
2型糖尿病は、インスリンが出にくくなったり(インスリン分泌低下)、インスリンが効きにくくなったり(インスリン抵抗性)することによって血糖値が高くなります。2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、食べ過ぎ、運動不足、肥満などの環境的な影響があるといわれています。
すべての2型糖尿病患者の方に生活習慣の問題があるわけではありませんが、血糖値を望ましい範囲にコントロールするためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要です。飲み薬や注射なども必要に応じて利用します。
その他の特定の機序、疾患によるもの
糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。遺伝子異常が同定されたもの、膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤や化学物質によるもの、感染症、免疫機序、その他の遺伝子症候群が挙げられます。病態によって治療法が異なるため、専門医による診断と治療が大変重要になります。
妊娠糖尿病
晩婚化・晩産化により日本においても妊娠中に糖代謝異常をきたす妊娠糖尿病が増加しています。日本では、全妊娠の10~12%、世界では、全妊婦さんの14%が妊娠糖尿病と診断されています。妊娠糖尿病では、出産時に母子に影響があるだけでなく、将来の母親とお子さまの肥満や糖尿病発症リスクが大幅に上昇することがわかっています。当院と京都大学で行った研究(ながはまコホート研究)では、妊娠糖尿病と診断された妊婦様が将来2型糖尿病になるリスクは、妊娠糖尿病と診断されなかった妊婦様に比べ6~9倍、発症年齢も45~46歳と10歳程度若いことが明らかとなっています。しかし、適切に対応することで、母子ともに元気に出産を迎え、また、将来の糖尿病発症も予防できることが分かっています。
さらに、1型糖尿病や2型糖尿病の方でも、前もって準備を始めれば、妊娠・出産ができるようになりました。正しい知識を得て、安全に妊娠と出産を迎えましょう。
また、産後は、お子さまの成長に合わせて、お母様の健康チェックも定期的に行いましょう。
当院では、妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠の方のケアや、計画的な妊娠、プレコンセプションケアを支援しています。
高齢者糖尿病
65歳以上の糖尿病を高齢者糖尿病と呼びます。加齢に伴って膵β細胞は減少し、インスリンの分泌量も比例して減少します。また、筋肉量の減少、筋肉質の低下、内臓脂肪量の増加、運動量の低下などによってブドウ糖を消費する能力が大きく下がってきます。これらのことにより、高齢者は糖尿病の発症リスクが高まります。若年層の糖尿病とは症状、併存疾患、起こり得る合併症に違いがあり、認知機能、身体機能、社会・経済状況なども個人差がありますので、血糖を適切に管理することが難しくなります。
また、加齢に伴って身体の変調に対する対応能力が下がるため、高齢者糖尿病では、血糖管理目標が若い糖尿病患者さんとは異なっており、安全面にも注意した上で血糖を管理する必要があります。
<当院での高齢者糖尿病治療のABC>
A:Age(年齢)&Activity(活動性)
B:Body Weight(体重)& Body Composition(体組成)
C:Complications(合併症)&Comorbidities(併存症)&Care(ケアの体制)
D:Duration of Life(予後)
E:Enjoy&Entertainment(人生の楽しみ)
当院での治療方法
薬物療法
薬物療法とは、薬を使って症状を抑えたり、改善させたり、治癒していく方法です。糖尿病治療では、食事療法、運動療法と併せて、3本の柱といわれます。糖尿病薬物治療は大きく変化し、今後も新たな治療薬が登場してきます。多くの種類があり、専門医でなければ安全かつ有効に使いこなせないほどになってきました。一人ひとりに適した薬物治療が必ずあり、糖尿病の病期やステージ毎に治療を見直すのも重要であることに注意します。
当院では、持続血糖モニターやインスリンポンプなど最新の医療機器や注射製剤、経口薬を使用して糖尿病薬物治療を実践しています。
食事療法
食事療法というと“制約ばかりのつまらない食事”とか、“食事制限”とか、考えがちかもしれません。食事療法とは、「食事調整」であって、一人ひとりに適した「摂取カロリー」「主食・主菜・副菜の内容」「塩分」「食事の回数」など、病気や身体の状態に合わせて調整をするものです。正しい知識を得て、無理のない形で続けていくことが何よりも大切です。
当院では管理栄養士による栄養相談を行っていますのでお問い合わせください。
運動療法
日々の生活の中で意識をせずに過ごしていると、どうしても運動不足になりがちです。
運動不足の状態が継続してしまうと、代謝の低下や運動機能の低下がみられるようになり、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病が悪化しやすくなってしまいます。
ジムに通ったり、スポーツを趣味にできれば運動習慣を改善しやすいのですが、継続することはなかなか難しいものです。改善のためには続けやすい工夫が必要です。
当院では無理なくできる運動を提案しますのでご相談ください。
フットケア
糖尿病外来では、専門の看護師が、爪切りや胼胝のケア、神経障害のケア、白癬菌のケアなどフットケアを行っています。
糖尿病からくる足の合併症はどの合併症よりも頻度が高く、糖尿病と診断されたときには既に5人に1人が何かしらの足のトラブルをかかえており、病歴とともにその頻度は高くなることがわかっています。問題は、神経障害があるために、足の症状に気がつかず長年放置してしまい、重症化する方が少なからずいるということです。また、足のトラブルをかかえていても相談できていない方が約半数いるともいわれています。
当院では、診察時に足のチェックを定期的に行い、必要に応じてフットケアも行っています。足病変は進行すると足切断にも繋がり、生活の質を落としてしまいます。足の症状がある方は、遠慮せず受診時にご相談ください。
また、糖尿病は持ってないけれども足のトラブルを抱えているという方も、ご相談いただければと思います。
糖尿病教室・学習会
医師や仲間と楽しむ治療を
4階フロアは、ミーティングルームとなっています。定期的に、糖尿病や生活習慣病に関する教室や学習会を実施しています。
また、キッチンを備えており、調理実習を通した栄養教室も行います。ぜひ、ご参加ください。
原則、事前予約制で外来受診中の方を優先しますが、内容によってはどなたでも参加できます。
詳しくは当院までお問い合わせください。
なお、内容により集団栄養食事指導料が必要な場合や、学習会の運営上、参加費が必要な場合があります。ご了承ください。